恋愛境界線

その上、若宮課長と支倉さんは、そのことを隠しもしなかったのだとか。


「大っぴらとまではいかないけど、コソコソ隠しもしなかったわね。自然体って感じで、そういうとこも皆の憧れって感じだったけど」


どちらも仕事が出来る二人だ。皆に知られても堂々としている様子は、想像に難くない。


浅見先輩はその頃を思い出す様に、「確か……付き合って三年経つって頃だったかな?」とボヤきながら


「二人が携わっている《リュミナリスト》のプロジェクトが成功したら籍を入れる予定だって、話だったのよ」


そう言って、婚約の事実が本当だったことを口にした。


それを聞いた途端、喉に渇きを覚え、奥がヒリつく様な感覚に襲われる。


「じゃ、あ……どうして二人は結婚しなかったんですか?」


「さぁ?その辺の詳しいことに関しては、私も知らないわ」


一緒に暮らす場所も決まってたみたいだったから、最初は私も含め皆が、別れたことを信じてなかったけれど。


そう言って浅見先輩は腕時計に視線を落とし、「これ以上、喋ってばかりもいられないわ」と、お喋りを打ち切った。



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