恋愛境界線

「うちの課長とよく飲みに行くって聞いたので、もしかしたら今日もそうなのかな、って」


決して、大人の世界の遠回しの誘い文句ではないことを説明する。


「若宮さんと?いや、今日は約束してないですけど。というか、そういえば、ここ最近は全然行ってないなぁ」


「そう、なんですか……」


もしかしたら、と思ったけれど、ここ最近頻繁に外食している相手は深山さんじゃなかったらしい。


ということは――


すぐさま頭の中に浮かんだ支倉さんの姿に、はぁ、とため息が零れ落ちる。


「それがどうかしたの?」


「あ、いえ。もしそうなら、せっかくだから私も離れた席から覗かせてもらおうかな、なんて」


あはは、と笑って誤魔化すと、深山さんもつられた様に笑ってくれた。


「一緒にじゃなくて、離れた席から覗くだけで良いなんて、芹沢さんって変わってますね」と。


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