恋愛境界線
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自分から食事に誘ったくせに、どうやら渚は仕事が長引いているらしい。


終業時刻を過ぎてから大分経つというのに、渚からは一向に連絡がこない。


私以上に定時で終わることのない立場だから、想定内といえば想定内のことだけど。


仕方なく、時間を潰す為に自販機で飲み物を買って、その隣の壁に寄り掛かってレモンティーを一口啜る。


この間のごーやオ・レなるものよりは断然美味しいけれど、紅茶としては一般的には美味しいとは言えない味だ。


「……私が社長だったら、真っ先にこの自販機を改善させるのにな」


冗談半分の――残りの半分は本気な独り言を零すと、一人だと思っていた空間に他人の声が響いた。


「何を言ってるんだか。社長ならば、それよりも先にすべきことが山積みだろう」


小さく響いたのは、どこか呆れ混じりの若宮課長の声。


「若宮課長!?……あ、えっと、お疲れさまです。珍しいですね、課長がこんな時間まで残ってるなんて」



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