恋愛境界線

「ってかさ、このプロジェクトが落ち着いたら、私も辞めようと思うんだ」


「えっ!?どうしてですか?」


今の仕事が好きそうに見えていただけに、浅見先輩が辞める理由が浮かばない。


奥田さんが辞めたからといって、何も、浅見先輩まで辞めることはないはずなのに。


そんな私に、浅見先輩は驚きの理由を教えてくれた。


「今更だけど、三年前のことに関して、自分なりにけじめをつけようと思って」


「三年前って……、もしかして」


「そう、そのもしかして、よ。私も共犯なの」


何かの間違いじゃないかと思いたいのに、続く言葉にそれを打ち消される。


「他社に情報を流したのは奥田くんだけど、それを知りながら、データをUSBに落として彼に渡したのは私」


「嘘、ですよね?」


「嘘じゃないわ。でも、まさか奥田くんがまた同じ行為に及ぶとは思わなかったけど」


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