恋愛境界線

「それは、今の仕事にもう満足して、興味がなくなったからなのか?」


若宮課長が上司の顔で訊ねてくる。


私を責めているわけでも、呆れているわけでもなく、悩んでいるなら相談に乗るとでもいう様な誠実な面持ちで。


「違います、逆です。楽しくなってきたら、もっと色んなことを学びたいって思うんです。それこそ、自分に満足できるくらいに」


決して、今の仕事に飽きたとか、気まぐれで決めたとか、そういう誤解はされたくなかった。


若宮課長は私の目を見つめ、ほんの数秒黙り込んだ後、ゆっくりと口を開いた。


「……そう。芹沢君が決めたことなら、私は陰ながら応援するよ」


例え課長と離れても、仕事ではずっと繋がっていられる。


きっと、そんな関係の方が、このままの関係よりずっと素敵だ。


「──有難うございます」


そう自分に言い聞かせて、若宮課長に笑顔を向けた。




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