期間限定恋人ごっこ【完】番外編
指定されたファミレスに入ると店員さんに案内された。
「こちらのお席になります」
『ありがとうございま____なんで、あんたがっ…』
ここにいるの…。
やめてよ…何、2人して私を馬鹿にするために呼んだの?
この男の顔が綺麗な顔じゃなくなってるのなんてどうだっていい。
誠人は私を笑いものにするために呼んだの?
これ以上ここに居たいという気持ちにもなれず、吐き気さえしてきたため席に座らず走って店を勢いよく出た。
背後で「沙夜ッ!!」と先輩をつけることを忘れ私の名前を呼ぶ誠人の声が聞こえたけど、そんなんで止まるわけがなく走り続けた____けど男の人の足の速さに勝てるわけがなくて、店を出て50メートルほど走ったところで腕を掴まれ止められてしまったため私の息が上がっている。
彼も少し息を乱していて…そんなことより掴まれた腕が痛くてたまらない。
引き止めるのに無我夢中なのか誠人は力の加減を分かっておらず、痕がつくくらい強く握っている。
『…ッ、もう逃げない!』
「嘘ついてんじゃねぇ」
『逃げないから!』
「嘘」
『しつこい!痛いッ、この手放してよ!痛い!』
「っ、悪ぃ」
そう言ってようやく放してくれた腕を見てみればやっぱりというか…鬱血していたりと酷いことになってる。
それを見てもう一度謝った誠人だけど、そんな謝罪とかいらないし中身がなく、スッカラカンの言葉にしか聞こえない。
誠人を睨みつけて「何なの」と訊くとアイツの話を聞いてやれと言われた。
ちゃんとカタをつけろと。
『…嫌だ、無理』
「逃げてんじゃねぇよ」
『…っ逃げたいよ。逃げたくなるよ!皆が皆前に進めるわけじゃないッ…進みたいわけじゃない!』
一目など気にせず吐いた言葉、気付いたら通行人がジロジロとこちらを見ていた。
ねぇ誠人…私はこれ以上前に進みたいわけじゃない。
弱虫だから、臆病者だから…これ以上は進めないの。