吐息



その瞳は、いつもの優しい彼に戻っていた。


猿ぐつわを外し、縛っていた紐を解いてくれた飛鳥さんは、私に上着を掛けてくれた。


その間も、彼はずっと申し訳なさそうな顔をしていた。


大丈夫。


あなたはなにも悪くない。


そう言おうとしたけれど、疲れと眠気で言えなかった。


その代わりに、精一杯の笑顔で返してみせた。


飛鳥さんは微笑んでくれた。



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