眼鏡王国記 ~グラッシーズの女神~
プロローグ

二つの集団が対峙していた。


一つは丘の麓に陣取ったオークやゴブリンといった人ならざる魔物の群れ。

もう一つは、広い平原を見下ろす丘の上に、整然と並び立つ一団。

揃いの白銀の鎧(プレートメイル)を身に纏い、腰には白銀の長剣(ロングソード)。
そして、その目元には色とりどりの眼鏡をかけた騎士の軍団。
一人として裸眼の者はいない。

騎士たちの中央には、およそ無骨な男たちとは似つかわしくない淡いブルーのシャツにチェックスカートの華奢な少女の姿があった。
隣にはローブを纏った背の高い魔術師風の男と、他の騎士よりも装飾の施された豪華な鎧を身に着けた男が少女を守るように左右を固めている。


少女はヒキツった顔で左右の男を見渡すと、おもむろに右手を上げ、か細い指を眼下に広がる無数の醜悪な生物たちに向け振り下ろした。


「と、ととと、突撃いぃぃ! してください」


間の抜けた号令。


しかし、騎士たちはそれを合図に、剣を抜きはなち怒号を上げて丘を駆け下りていく。


目標は魔物の群。


少女は震えを隠すように左右に侍る男性の手を握りしめると、心で強く念じるのだった。


【眼鏡は正義です!】と。
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