産んでいたらこうなったかもしれない
 物心ついた頃から、僕は自分が三人の姉たちの誰とも似ていないことに気が付いていた。勿論父とも母とも違う顔をしている気もしていた。五人とも一重瞼だが僕は二重だ。母は一重にしては目が大きいので、僕はどちらかというと輪郭的にも母に似ているのだろう。でも、全体的にどうも違う。父と母、双方の母が二重なので、お前は隔世遺伝でおばあちゃんたちに似ているのだと母に言われてなるほどと思うしかなかった。性格的には姉たちと同じく明るく、男の割には社交的で、家族の中で特に浮いてもいない。血液型? 父がAB型で母がO型。姉たちは一番上とすぐ上の姉がBで、真ん中の姉はA。僕もA。学校の理科の授業で血液型を習った時はドキドキした。もし違っていたら決定的に姉たちと血の繋がりが無いと宣告されることになるわけだから。
 母が父と同じ血液型の男と浮気をしたのかとも考えてみた。そんな馬鹿な。今では七十になろうかという母。三十年前は塾で英語講師をしながら英字新聞に記事を書いたり、翻訳の仕事をしたりと、かなりのキャリアウーマンであった。今でも記事の依頼があるし、色々な国から英語で手紙が来るし、返事もスラスラと英語で書き送っている。意志の強い活達とした人で、三人の姉たちは母の性格や生き方をそっくり受け継いでいる。男などものともしない。浮気するも何もそんなスキが無いように見える。だから母は浮気などしていないと僕は思う。思っていた。この歳になるまで。
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