マネキン少女
ヤンチャな子犬って、何だよ!!


心の中でそんなツッコミを入れた瞬間、自分の何処かに存在するスイッチがオンに切り替わる。


私は男でも女でも無い存在。
ちょっと生意気な、大人に慣れない子供。


今にも足音を出して歩き出しそうなポーズを取り、色んな表情をコマ割りみたいに作ってゆく。


「凄く良いよ!色んなポーズをお願い!」


それは、他の読者モデルよりは長い時間だったけど、結局わずかな時間での撮影。


でも、その時間だけ私は生きている事を感じる事が出来たんだ。


読者モデルの報酬より、レッスン代として支払うお金の方が多いのが今の私の現実だけど、いつかプラスにしたい。


心の中で願うくらいなら、許されるよね?


もっと、写真を撮られるようなモデルになりたい。


撮影中の恍惚感が抜けきらないまま電車に乗り込むと、鼓膜に残ったシャッター音を思い出す。


感情に浸っているうちに、最寄り駅に電車が止まった。


早く自立出来るレベルになりたいと強く強く願いながら、お世話になっている家に帰る為に歩いた。



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