マネキン少女
気付けば擦りすぎた身体が真っ赤になるまで洗っていた。


私なんて誰にも愛されない。


なのに、もう引き戻せない程汚れてしまったからなおさらだ。


♢♢♢
時間は過ぎ、窓から見える空が暗闇に染まってゆく。


すっかり薄暗くなった外を眺めていると、ドアをノックする音が聞こえ身体が硬直してしまう。


もしかしたら、また春が来るんじゃないか。


そんな悪夢を想像して怯えていたが、顔覗かせたのはおばさんだった。


「るるちゃん!ご飯出来たから食べて!!」


そう言われても……。


食事をしたら春と顔を合わせなくてはならない。


こんな状況で無理だ。


「ごめんなさい。今日は体調が悪い……」
「なら、安静にしているのよ……」
「はい……」


開いていた扉が閉まり、1人っきりの空間に変わると涙腺が緩んでしまう。


涙が止まらない。


私の心はこの日完全に殺された__



< 7 / 181 >

この作品をシェア

pagetop