皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】


「――やっときたか」

「っ―――!」


その声を耳にした瞬間、私の決意はいとも簡単に崩れてしまった。

背筋が瞬時に凍りついて。呼吸が止まった。

心臓さえ止まってしまいそうな衝動に駆られた。


だって。

甘みのある、少し低くて艶のあるこの声⋯⋯

私はこの声を、知っているから⋯⋯。


「カルム、もういい。去れ」

「はい」


指示通りカルム団長が足早に去っていくと同時に、入れ違いに人の動く気配がする。

足音や、椅子の軋み、布の擦れる音。

ひとつひとつの動作が、研ぎ澄まされた五感に突き刺さる。

私は俯いたまま、瞬きすらできなかった。

呼吸が思うようにできなくて、今にも倒れてしまいそうだ。


どうして⋯⋯

彼がここにいるの⋯⋯

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