秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 たとえ俺の子でもそうでなくとも、素直で人懐っこい恵麻ちゃんはかわいらしく、俺も愛おしさを感じていた。ふたりさえよければ、俺は今後もふたりのそばにいたい。家族になりたかった。

 焦るな。やっと見つけたんだ。

 俺は自分にそう言い聞かせながら、手を伸ばして天音の滑らかな頬に触れた。すると、驚いた彼女の身体がピクリと跳ねる。

 今しがた落ち着かせたはずの心が、すぐに彼女を求めて切なく痛んだ。

 今すぐすべてを奪いたくなる。

 溢れる想いを意識の底に強引に押し込めて、俺は彼女の髪に唇を寄せた。
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