偏にきみと白い春
「わたし、ね」
「うん」
「───歌が、歌いたい」
「うん」
「はるとうたたねの一員として、一緒に、夢を見たい」
あ、と思う。
溢れた涙の粒が頬を伝った。気づいたら溢れていた。それを止める方法なんて、今は見つからない。
───ずっと、言ってはいけないと思っていた。認めてはいけないと思っていた。
勉強して、良い成績をとって、良い人生を歩むレールに乗ること。それがすべてで、『1』の数字をとり続けることが私の生きている意味で、存在価値で、自分の意思なんて必要ないと思っていた。
けれど、違う。それは違った。
自分の意思で、自分の言葉で、認められる。認めてあげられる。
「b-station 、わたしもでたい」
そうだ、これが、私の本当の気持ちで、本当の言葉だ。
「うん、綾乃、一緒にやろう」
領の顔は、涙で滲んでよく見えない。だけどその声が、ひどくやさしく耳に届いて、私はもっと泣きそうになる。
「俺らと、夢、見よう」
馬鹿馬鹿しくなんてなかった。音楽を誰かに届けること、誰かと一緒に夢を見ること、私たちだからこそつくれるものがあるんだ。