偏にきみと白い春
「私、ずっと、1位をとることが自分の存在価値だと思ってた。そうしなきゃ、この家にいちゃいけないって、生きてちゃいけないって、そう思ってた」
言った瞬間、涙が出た。
お母さんが聞いてくれてる、私の言葉を、想いを。
どう思われるか、何を言われるか、そんなことわからないけど。
もう、黙っているだけの生活は終わりにしたい。
「お母さんやお父さんの期待を裏切りたくなくて、勉強ばかりしてた」
「……」
「受験で失敗して、プライドも、自信も、家族の期待も、全部失って、」
受験合格発表の日。自分の番号がそこになかったあの日。友だちと距離を置いたあの日。お母さんと上手く話せなくなったあの日。お母さんとお父さんが私のせいで喧嘩をはじめたあの日。
何度も、何度も何度も自分のことをせめて、泣いて、思った。『生まれてこなきゃよかった』って、何度も。
「だけど、ね。わたし、変わった。変えてくれる人たちに、出会った」
そう、今、この瞬間だってそうだ。こうやって、自分自身に向き合うきっかけをくれた。逃げ出さない勇気をくれた。
「あのバンドに入って、私、変われたの」
「……」
「お母さん、お母さんの期待通りに生きれなくて、ごめん。何度も失敗して、ごめんなさい。だけど私、もう、自分の意思で歩ける。歩いて行ける」
自分の道は、自分で決める。誰かの物じゃない。