偏にきみと白い春
「できそこない…?」
高城領の言葉に重なるように、授業の始まり5分前のチャイムが鳴り響く。私たちはそれに一瞬固まって。
でも。
高城領は動こうとしなくて、私もまた動こうとは思わなかった。なんでかなんて、そんなことわからないけど。真っ直ぐ見つめてくれる高城領の目が、私に行くなって言ってる気がしたからかもしれなかった。
「……私の話、聞いてくれる?」
いつからだろう。
人に話を聞いてもらうことが怖くなったのは。人と、関わることをやめたのは。
それでも、何故か私は、きみに、領に、聞いてもらいたいと思ったんだ。
「うん。聞かせて?」
高城領は、いつもより優しい笑顔で私を見上げた。私はその言葉に、ズルズルと座り込む。高城領の隣に。
「……あのね」
空は青いし、雲は白いし、風は冷たくて、当たり前のように私達は息を吸う。
そんな当たり前のことが、何故だか今は泣きたくなるくらいキレイなことだと思うんだ。