偏にきみと白い春


 そんな私に、周りは大きな期待を抱いていた。

 小学校のテストはほぼ100点しか取ったことがなかったし、入学試験が難しいと噂の有名な塾には一発合格で通っていた。

クラスメイトたちはわからない問題があれば私に聞きに来たし、先生たちは何を聞いても答える私を授業中嬉しそうに何度もあてた。

 確か学級委員も何度もやらされた気がする。その時の私はそれすら当たり前のことだと思っていた。だって、クラスで1番しっかりしているのはこの私だって自分で知っていたから。


 そんな順風満帆な小学校時代を過ごした私にとって、失敗や挫折なんていう言葉それ自体が無知だったのだ。

 周りの人間たちは、私に期待を抱いていた分、期待はずれだった時のショックが大きかったんだろう。



 私は、中学受験の失敗をした。



 それが、私の人生初の挫折だった。有名な難関私立中学の受験。親も、先生も、クラスメイトたちも、私だって、合格を信じて疑わなかった。絶対に受かると思ってたんだ。完全に己惚れていた。

 受験票に載った自分の番号が、合格者一覧の数字から抜け落ちているのを発見した時、『こんなことがあるのか』と本気で思った。それくらいに自信があったし、落ちるはずがないと思っていたんだ。今考えれば、随分と自分を驕った考えだとは思うけれど。

 そうして中学受験に失敗した私は、みんなが行く公立の中学へと進学することになった。それが何故だかとても惨めで、惨めで、仕方なかった。


 だって、あんなにも私を囃(はや)し立てた周りの人間たちは、いとも簡単に私から離れていったのだ。
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