偏にきみと白い春
「てかさ、綾乃俺らのバンド名知らないよね?」
領がコウヘイくんにじゃれながら、興奮気味にそう言う。知ってるわけがない。だってここは、私の未知の世界なんだから。
「……うん、知らない」
「よっしゃー!じゃ、教えてやる!俺らのバンド名はー」
「「はるとうたたね」」
領が大きな口をあけて、今にもきっとその言葉を言おうとしたところに、他の2人が声をそろえてそう言った。
そして、ニヤリと笑う2人。領はポカンとして、それから怒り始めた。
「おっまっえっら!! 俺がいませっかく言おうと思ったのに! 横から口出すなアホー!」
領がコウヘイくんに飛びつく。それに対して、「ばかみてー」って笑う赤川さん。
「ははっ」
そして、そんな " はるとうたたね " のメンバーをみて、私も自然と笑顔が溢れた。
「「「……」」」
わたしが声を出して笑ったからか、3人が動きを止めてこっちを見た。ビックリして笑いが止まってしまった。な、なに、その反応は。
「綾乃が笑った……」
「てか、笑うとチョーカワイイじゃん」
「バッカ言うな怜! 」
コソコソと何か言っているのが耳に入るけど、もしかして私のことバカにしてる? なんて思ったけれど、3人は咳払いをひとつして私の方に向き直った。
「ってことでー改めて!」
「はるとうたたねへヨウコソ」
───はるとうたたね、spring nap───
私も今日から、ここの一員になるんだ。