忘愛症候群


お昼休み中庭で、ケンとトモカも前で散々泣いて何故か二人も泣きだしてしまい、互いに慰め合っていた。



側から見れば異様な光景としか言えなかっただろう。

そんな昼休みも終えて、何とか気持ちを切り替えて午後の授業を受け終えた後、放課後俺はある場所へと向かった。






____________…


「やぁ、初めまして水島一真くん」


初めて会った目の前の人物は愛の病気の担当医。



「先生俺に治療法を教えてください」

「ダメだ」

「どうしてッ」


前置きなく単刀直入に訊けば即答された。

治療法がないわけじゃないのにどうして治さない、どうして教えようとしないんだ。



「君にとっても愛さんにとっても残酷な決断だからだ」

「……んだよ、それ」


残酷って…なんだよ。


「それでも…どうしても、教えて欲しいです」


お願いします、と深々と頭を下げる。



「それは本心かい?」


そんなの愚問でしかない。



「本心以外の何でもありません」



治療法が残酷だと言うなら___俺はそれを受け入れる。



「それじゃあ君だけには教えるが…」



“君だけ”?それって…。



「愛の母親たちには言ってないんですか?」

「そうだ。言わないんじゃない、言えないから伝えてないんだ」



それほどまでに…恐ろしい方法ということ。
俺は静かに唾を飲んだ。



「忘愛症候群は__…」



その残酷な治療法は。



「…え」



俺の全ての思考を停止させた。



【一真side end】
< 32 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop