風鈴が鳴る頃に
「なあ、定期的に会おうな」
隣を歩く隼人がわかりやすく眉を下げる

隼人とは幼稚園からの仲で、高校のクラスまで同じという唯一の幼馴染だ
ほぼ家族のように一緒にいるので後1週間でお別れなんて信じられない

この住み慣れた街から出なければならないと知ったのは1ヶ月前

理由は父の転勤

なんていうありきたりな事じゃなくて、
両親が田舎の暮らしに
憧れを持ったからだった。

うん。受け止めがたい。
ツッコミしかない。

でも、この何も代わり映えのしない日々とお別れしたい気持ちもあった

「当たり前じゃん、たまにはこの街に戻ってくるよ」
少し遅れて隼人に返事をする



何か変わるだろうか、


変わると信じたくて
立ち止まり空を見上げる
雑居ビルが視界に入るので目を閉じる


風が顔を撫でた


「おい、何してるんだよ」
少し前にいる隼人が振り返り不思議そうに見つめた後に、同じように空を見上げた


「飛行機雲」
隼人が口を開く

青空を白い線が引く雲があった


「あれ?さっきまでなかったのにな」
すぐ目を閉じたからだろうか


「小さい時は、あの線が空の切れ目だと思ってたな」
急に隼人がすっとんきょうな事を言い出し、思わず吹き出した。

「なんだそれ笑」

「その時はわからなくても、いつかわかるようになる時が来ることってあるんだよな」
隼人が変に真面目に話続ける


「そうだな。じゃあ数学が今はわからなくてもいつかはわかるようになるな」
「それは無い」
隼人が即答し、笑いが起きる


いつもの僕らだった。
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