昨日までを愛せますように。
朝から外出中
季節は秋になり、木々も少しづつ赤や黄色へと色付いてきた。

美優とは連絡を取り合い、休みの日はショッピングをしたり、カフェでランチをする仲になっていった。

今日は新規オープンしたカフェに立ち寄り、ティータイム中。

「香奈ちゃん、キャラメルコーヒーって美味しいんだよ。でも、香奈ちゃんは甘いの嫌いだから好きじゃないかな?」

「うん、甘いの苦手だからキャラメルコーヒーは飲めないかも……」

「でも、ケーキは食べたいよね?香奈ちゃんはいつものティラミスにする?」

「ん、じゃあティラミスで」

ティラミスは苦味があるから、唯一食べられるケーキだ。

目の前にいるふわふわで可愛い女の子が既婚者で買い物依存症だとは、他のお客の誰もが思わないだろう。

美優はお互いに心の内を打ち明けた日から、ずっと……あの男の人(つまり旦那さん)の話はしなかった。

たまに聞いたとしても、『もう帰ってくる頃だから帰るね』と言う帰宅する前の私とのお別れの合図のような言葉だった。

名前すら出さないから、私も合えては聞かない。

聞かれたくないから出さないのかもしれないし、美優には美優の事情があるのだと思うし……。
< 34 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop