昨日までを愛せますように。
「そう言えば……、由良さんは何故、あの時に旦那さんのフリをしたのですか?」

「……あぁ、アレはですね…、美優様が"私は律斗様とは結婚してないよ"と香奈様にアピールしたかったからです」

「そ、そうなんですか。え?……と言うと、美優は全てを知ってた?」

「そういう事になりますね。時効ですからお話しますが、律斗様ときちんとお別れする為に、初めはお父様と律斗様に探偵の尾行をつけさせました。その後、香奈様のお話を聞かれてから、以前の彼氏様の素行調査を依頼しました。偶然にもその直後にあの事件が起こってしまったのですが……。香奈様の御実家に嘘のキャンペーンでお金を配布したのも美優様です。

あ、怒らないで下さいね。全てはお二人が幸せになれるように仕組まれた事ですから……!でも、彼氏様の殺人事件には全く関与してないですからね!」

由良さんが玄関先で慌てふためいている。

律斗さんが家に上がるように言ったが、由良さんは「これ以上は美優様に怒られてしまいますので……!」と言い残し、美優から預かって来たケータリングのオードブルなどを置いて、慌てて帰ってしまった。

そんな由良さんを見て、玄関先で私達は微笑んだ。

「……あはは、律斗さん、上手く笑えるようになったね」
「アンタもね……!」

目と目があった時、お互いを見ては声を出して笑ってしまった。

「……さっき、言いかけたのは、香奈が良かったら付き合って、と言いたかったんだ。こうして友達として三年も一緒に居るから、そんな気にもならないかもしれないけど…」

「…わ、私で良かったらお願いします」

私達は三年間も秘めていた想いを露わにした。

全てが明かされた今、美優に逢いたくてたまらなくなった。

聞きたい事が沢山ある。

─────買い物依存症は治った?

─────ちゃんと食べてる?コタツテーブルの具合はどうですか?

─────私と過ごした日々は楽しかった?

………他にも沢山、聞きたい事がある。

いつか、近い未来に会えますように。
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