キミから「好き」と、聞けますように。

「よかったら今度さ……鈴李の曲歌ってくんね?」



気持ち悪いことを言っちまったなぁ……。



「えっ?」



そりゃ温森だって引くわ。



「温森、きれいな声だし、例えば『鳴いた胸の声』ってやつあるじゃん? 温森、合ってると思うんだよ」



『鳴いた胸の声』は、鈴李のデビュー曲で一時期ネットで大ヒットしていた。


切ない表現力、聞いただけで胸が苦しくなるような歌い方をしていて、まるで歌詞を読んでいると自分がその場を近くで見ているような気分になる。


……つーか、普通に考えて、あれ恋愛ソングじゃねーか。


俺は一体、温森に何を頼んでるんだ?


これじゃあ、まるで俺、温森に愛を伝えてもらうよう頼んでるみたいじゃねーか。


やっぱ忘れてくれ、と言いそうになったけれど、どうも間に合わなかったようだ。



「い、いいよっ!?」



おぉ、マジかよ……。


こう言われちゃ、今更キャンセルには出来ねぇ。


……あぁ、俺としたことが。




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