エリート御曹司は淫らな執愛を容赦しない~初夜に繋がる結婚事情~
「左門さんってあんな冗談言うんだねえ」

真由乃が楽しそうに笑うので、私は眉間に皺を寄せまくって答えた。

「完全に馬鹿にしてるのよ、あの態度。私、一応、上司なんだけど」
「その前に恋人で婚約者じゃない」
「違う!」

予定していたダイニングバーの席に着き、真由乃と乾杯をした。優雅にもバレているけれど、私は友人が少ない。地元でも、こうして食事などで会うのは真由乃だけだ。

「左門さん、変わったんじゃない? 愛菜が戻ってくる前に、何度か左門さんと仕事で話したことあるけど、もっとクールな感じだった。笑ってるけど、笑ってないっていうか」

真由乃がジントニックのロンググラスをステアしながら言う。やっぱり、私以外の人もそう感じていたのね。仕事する分にはいいけど、人間性が読めない男だもの。

「でも、さっきの左門さん、すごく楽しそうだったよ。愛菜のこと好きなんだな~って伝わってきちゃった」
「そういう感情じゃないでしょ。私の友人だから愛想よく振舞っただけで」

言いながら、私はモヒートのロンググラスを傾けた。中のミントをもう少し潰した方が好みだななんて考えつつ。

優雅にキスされたのは、少し前。
それから、優雅とは何も起こっていない。進展どころか、優雅は何もなかったかのように接してくる。まったく態度を変えてこないのだ。
あんなに強引にキスしたのに、執着を見せたのに。

そりゃあ、いきなり情熱的に愛をささやかれたって、私も困る。全然そんなつもりないし、婚約も保留だし。
だけど放置されると、気になるっていうか……。
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