カレシとお付き合い② 森君と杏珠

 今日は学校の都合で、全クラブがないと聞いた。

 私はクラスが終わったら、急いで荷物をまとめて、森君に「帰りますっ」て挨拶して、聞こえてないかもしれないけど、とりあえずクラスから逃げた。

 サエキさんに何か言われたらどうしようと思ったし、隣の森君とどう話していいのか混乱してたし、サエキさんと森君がもしかして一緒に帰って、なんか私の事とか話しし始めたらすごい嫌だし、去ったんだ。
 けどこんな事今だけの逃亡で、明日から実際どうしよう⋯⋯ とか思いながら⋯⋯ 。

 帰る約束してないけど、
 でもとにかく紬ちゃんと話したい。
 
 あっ、いた!


 「紬ちゃん〜」


て抱きついた。紬ちゃんも、


「杏ちゃーん、どーしたー? 」


と抱き返してくれた。
 そう、こんなかんじが女子校のノリなのよ。
 泣きそうだ。平和。

でも、すぐ平和は乱される。


「紬は俺のだから」


えーん、うるさい彼氏!
いつも一緒にいるんだから、こんなクラブのない日ぐらい、紬ちゃんと過ごさせてよ。


「もうヤダー」


と紬ちゃんに泣きついてたら、後ろで辻本くんが「よぉ」と誰かに挨拶してる声がした。
よかった、誰か来たから辻本君、あっちに行ってて。
私は紬ちゃんに慰めてもらうから。
紬ちゃんが、


「なんかあった?」


と聞いてくれる。

 森君の事は言えない。
 自分でも何だか分からないし、彼と何かあったわけでもないし。

 サエキさんの事だけ聞いてもらおう。
サエキさんがややこしいのは、紬ちゃんも知ってる。
 ややこしいクラス頑張って、ってよそのクラスにいる友達にも言われるぐらい。
 ほんとに。
 そのクラスで、ここまで何とかしてきたのに、まだ後半長いのにやばいよ。


「えーん、明日から怖いよー」
「どうなったの?」
「私、ただでさえ嫌われてたのに、明日から何かヤバそうだよー」
「もう、うちのクラスおいでよ〜」
「行きたいよ〜」


 この会話。
 そう、これが女子校よ。
 あー、しゃべりやすい。
 わかってるよ、クラスがかわれないことなんて。
 どちらも全然わかってる。
わかってて、甘い女子の世界で話すの。
 サエキさんには分かるまい。
 あ、だから嫌われてるのか⋯⋯ 。

 すると、後ろで紬ちゃんの彼が、


「おまえのクラス、どうしたの? 」


と話してる。

 誰だ、同じクラスって!
 今の話聞かれちゃった⁈
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