契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「そろそろ、もっとこっちに来ないか」
思いもよらない言葉をかけられ、途端に鼓動が弾む。
どう反応したらいいのかわからず、七央さんの顔をじっと見つめてしまう。
視線が固定されてしまったような私を、七央さんはフッとおかしそうに笑った。
「別にいきなり襲ったりしないし、触れもしない。ただ、もう少しそばで眠るくらいしても、罰は当たらないと思わないか? 一応、夫婦なんだから」
「それは……まぁ……」
「どうしても近づきたくないと言うなら無理強いはしない。嫌われて、契約を解消したいなんて言われたら──」
「そんなこと言いません!」
七央さんの声に被せるようにして言い返してしまう。
そんな私に、七央さんは口角をわずかに上げた。
「なら」
七央さんの手が、私の返事を待つように差し出される。
心音が外に漏れているんじゃないかと思えるほど、大きな音を立てて鳴っていて苦しい。
指先が触れたら、このドキドキが伝わってしまわないか。
そう思いながらそっと七央さんの指先に手をのせた。