契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「でも、桐生さんの奥さんってどんな人なのなかって、CAたちが噂してましたよ。桐生さん、何も話さないからみんなの妄想が炸裂してて」
「人のことでずいぶんと盛り上がってくれてるんだな」
どこか楽しそうな森川にちらりと視線を送ると、森川はぎくりとしつつも「へへっ」と笑ってみせる。
結婚したといっても、相手に関しては職場の人間は誰も知らないところ。
あのはじめの食事会に参加していた森川や他のメンバーたちが、結婚相手が佑華だと知ったらかなり驚くに違いない。
どうしてそんなことになったのかと騒がれるのも癪だから、わざわざ今は言う必要はないと思っている。
あの食事会後、参加していた女性陣についての話題になると、「助産師だって言ってた宇佐美さん、可愛かったよな」と、佑華は男性陣の一番人気を獲得していた。
相手側の参加者の中で一番静かに黙々と食事をしていた佑華は、あとから聞けば俺と同じく人数あわせの付き合いで参加したとわかった。
そんな〝人数あわせ〟のふたりが結婚したなんて話題、軽く流してもらえるはずがない。
「じゃ、奥様と休暇楽しんでくださいね」
森川はそう言って、再度「お疲れ様でした」と事務所方面に向かって通路を歩いていった。