契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


 だから敢えて、契約結婚という形で身を固められたらと考えた。

 その相手に相応しいのは、結婚願望がなく、俺に対しても興味を示さなかった相手。

 そして、自分の仕事に誇りをもって従事しているかが重要だと思っている。

 機内の非常事態に対応してくれた助産師だという彼女との再会は衝撃的だった。

 そのせいで彼女に意識が向いたのは確かだが、俺の探し求めていた条件を彼女はすべて満たしていた。

 だからあの日、迷いなく声をかけた。

 これを逃したら、次にいつ自分が求める女性に会えるのかわからなかったから。


「ふさわしいって……私、あの日も言いましたけど、結婚願望とかなくって、だから、いろいろとまだ考えられないというか──」

「俺も同じです。結婚願望なんてない」

「え……じゃあ、どうして」

「両親に、身を固めるように迫られて、何度か見合いもさせられていて……でも、縁談をすすめる気にはなれなくて。今は、うまいこと逃げているところです」


 くっきりとした大きな二重の目を持つ彼女のその目が、更に大きくなったのを目撃する。

 少し同情を買うくらいでもいいと思っている。

 それで、聞く耳を持ってくれるなら構わない。

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