やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない
「私、これで失礼します。それじゃ、おやすみなさい」
「えっ、おい、大野?」

 呼び止めようとする三浦部長を無視して背を向けた。自分でも不思議なくらい後ろ髪を引かれている。

「……」

 嘘。

 こんなの嘘。

 気の迷いに決まってる。

 走りながら私は自分に芽生えた感情を否定するのであった。
 
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