拝啓、あしながおじさん。
「あれまぁ、大変だねえ……」

「そうなのよ~。高校の勉強ってやっぱ難しくなってるよね」

 さやかだって、中学まではそれほど成績も悪くなかったはずだ。……珠莉の方はどうだか知らないけれど。

「でもさ、愛美は勉強はできるけど流行には(うと)いじゃん? こないだだって『〝あいみょん〟ってこの学年の子?』って訊いてたし。タピオカも知らなかったでしょ?」

 さやかが愛美のやらかしエピソードを暴露した。
 人気シンガーソングライター〝あいみょん〟を「この学年の子?」と言ってしまったのは、入学して間もない頃のことである。その話が学年全体に広まってしまったせいで、愛美は〝ボケキャラ〟認定されてしまったのだ。

「あれは……、ボケとかじゃなくてホントに知らなかったの! 施設にいた頃はあんまりTVも観られなかったし、近くにコンビニもなかったから」

 流行に疎い愛美は、周りの子たちの会話になかなかついて行けない。さやかがいてくれなかったら、きっとクラスで一人浮いていただろう。

「あのさ、愛美。周りの子の話にピンとこない単語が出てきた時のアドバイス。そういう時は、スマホでググるといいよ」

「〝ググる〟?」

「うん。スマホ貸して?」

 さやかにスマホを手渡すと、彼女は画面を操作しながら愛美に教えた。

「ここに〝G〟のついてる検索エンジンあるじゃん? この部分に調べたい単語を打ち込んで、検索のキーを押すの。そしたら検索した結果がいっぱい出てくるから」 
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