御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
【番外編】Make no mistake,I've loved you since forever.
 十二月初旬の昼下がり、マンションのリビングで俺の前に座っているのは残念ながら妻の早希ではない。

「もうすぐ芽衣も一歳か、早いな」

 しみじみと呟くのは、株式会社ストリボーグの社長を務めている岡崎尊だ。高校の同級生で親同士が知り合いだったが、岡崎本人と個人的に仲が良かった記憶はあまりない。

 そもそもタイプが違うし、航空機関係の会社の後継者である岡崎が羨ましかったのもあった。

 岡崎は岡崎で父親の千葉重工業を継ぐつもりはないとはっきり意思表示をしている俺が面白くなかった部分もあったらしい。

 それでもこうして縁が続いているのは会社同士の繋がりがあるのを含め、お互いに大人になったのと会社を担う者として分かち合えるところがあるからだ。

 持ちつ持たれつと思っていたのに、こいつには一生かけても返せないほどの恩がある。

「早希の陣痛が始まったとき、茜が付き添って俺の車で病院に行ったんだよな」

 つい昨日の事のように話す岡崎を俺はじっと見つめた。

「お前とお前の妹には感謝している。早希や芽衣のそばにいて支えてくれていたことを」

 これは本心だ。俺が礼を告げたのが意外だったのか、岡崎は目を丸くしている。そしてニヤリと笑った。

「ま、結果的に丸く収まってよかった。茜なんて早希から妊娠の相談を受けたとき、すぐにでも殴り込みにいく勢いだったぞ」

 からかい混じりの口調だが、俺は笑えなかった。

「……来てもらった方がよかったのかもしれないな」

 そうすれば、もっと早くに早希と向き合えたのかもしれない。すべては仮定の話だが、この後悔だけは二度と消えないだろう。
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