御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
 ここ最近、芽衣に引っ張られることが多いのでまた切ってしまおうか。簡単にでもまとめられる方がいいかな。

 美容院にも、もうずっと行っていない。せめて年内には行っておかないと。

 身長は百六十五センチと女性としては高い方かもしれないが、体形は至って普通だ。それにしても産前はもちろん妊娠前より痩せたのは、予想外だった。

 化粧も最低限で、顔に派手さがない。仕事の際は懸命にメイクをしていたけれど今はそこまでの必要はない。童顔とでもいうのか、肌の綺麗さが唯一の自慢だ。

 とはいえ娘のもち肌には敵わない。そっと芽衣の頬に触れると彼女は屈託なく笑う。

 ぷくぷくのほっぺたは健康そのもので、二重瞼の大きな瞳に、影を作りそうなほど長い睫毛は、幼いながら整った顔立ちだとはっきり断言できる。この瞳の色を含め父親譲りだ。

 私から受け継いだのはこのくせ毛くらいかも。

 私は芽衣を抱っこし、改めて腕に力を込める。三千グラムと少しでも生まれたこの子も気づけば九キログラムになる。本当に子どもの成長は早い。

 芽衣に朝食を与える傍ら適当に自分の朝食を済ませる。芽衣はわりとなんでも食べてくれるので正直、助かっている。

「あとでお散歩に行こうね」

 十月半ば、肌寒い日もあるけれど日中は比較的暖かくて日光浴にちょうどいい。それまではお気に入りの人形で遊んでいてもらおう。

 長くは続かないけれどだいぶ一人遊びもするようになった。
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