もしも世界が終わるなら
長い時間電車に揺られ、やっと自宅付近に帰ってきた。
壊れたキャスター部分を起用に浮かし、なんとかまだ動いている車輪をアスファルトに当てて引く。悪路など滅多にない道は車輪が欠けていても、驚くほど快適に荷物を運べる。
電車内の混雑で気づかなかったメールやトークアプリなどが溜まっていて、歩きながらひとつひとつ確認していく。
順に見ていくと溜まっていた連絡の中に、夏目さんからのショートメールが含まれていて、何度も差出人を見直す。何度見返してみても、メールは変わらず夏目さんからだ。
電話番号は同僚だから知っているとはいえ、かかってくることはないし、メールも初めてだ。若干緊張しつつも、開いて頬を緩ませる。
『ひとり旅を満喫していますか? こちらに帰ってきたら食事にでも行きませんか?』
メールは既読がつかないから、すぐに送り返すこともないのに、自然に返事を打ち込んでいた。
『ちょうど戻ってきたところです。お食事、お時間が合いましたら是非』