李世先輩は私のことを知り尽くしている?
「はあ……はあ……」



私たちはエスカレーターを駆けあがって、四階に逃げこんだ。




「人も多いし、ここまで来れば見つからないだろ。休もうぜ」

「うん……」





ところどころに設置されているベンチに私が腰を下ろすと、江真くんは立ったまま尋ねる。



「陽茉って、好きな飲み物ある?」

「えーと……ミルクティー、とか」


「おっけ。ここで待ってて」





しばらくすると、江真くんはプラスチックカップに入った飲み物を二つ持って戻ってきた。


そして、片方のカップを私に差し出す。



「はい、どうぞ」


「あ、ありがとう。いくらだった?」

「いいっていいって」

「でも……」




江真くんは私に隣に座って、抹茶ミルクを飲みながら言う。



「どうせ、アイスをおごるつもりだったし。それに、すげーうれしかったんだ。陽茉がオレのことを選んでくれて」



選んだ……か。



そうだよね、江真くんと一緒に、李世先輩から逃げてきちゃったんだもの……。


江真くんは気分が高揚しているみたいだけど、私はむしろ、後ろ髪を引かれるような違和感がある。



胸がチクチクする。



本当に、これでよかったのかな、って……。
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