李世先輩は私のことを知り尽くしている?

臆病な自分(Side李世)

Side 李世

陽茉ちゃんがクラスの男子に告白されたという情報を古瀬くんから聞いてから、早数日。


俺はずっと、ヤキモキしながら毎日を送っていた。


陽茉ちゃんの幼馴染である橘くんを勝手に彼氏だと勘違いし、失礼な態度をとってしまったという失態があるため、強気に行動することが憚られるのだ。


無粋なマネを、陽茉ちゃんの前でしたくはないし。



とはいえ、告白してきた男子との関係性は気になって仕方ない。


それに、自然教室以前のように、陽茉ちゃんとおしゃべりがしたい……。




ピコン♪




ん、スマホか。誰だ?


そんな状態の俺に連絡をよこしてきたのは――





「急にお願いしちゃってごめんね、李世。一緒に来てくれる予定だった友達が、都合つかなくなっちゃってさー」

「別にいいけど……」

「マジでありがと!クレープおごってあげるね~」





ニコニコしながら、バンバンと思いっきり俺の肩をたたく。





「おい、痛いって」

「ええ?」





身内だからって、もう少し手加減できないものだろうか……。



俺にスマホで招集をかけたのは、姉の美和だった。


その日の放課後なんて突然すぎるけど、ちょうど部活も無かったので、大人しく付き合ってやることにした。


それにしても、こんなに大きいショッピングモールがあったとは。


まだ外装も内装も真新しいし、オープンして数年ってところか。




「んじゃ、先にクレープ食べちゃおっか。この辺ブラついて待ってて!」

「わかった」




あんなに機嫌よくおごってくれるということはきっと、自分が食べたかったんだろうな。


心を読まなくとも、16年間共に生活してきた姉のことは、手に取るようにわかる。


ちなみに、俺の家族にテレパスはいないが、父方の曽祖父が同じ力を持っていたとかいないとか。


とにかく、食べてみて美味かったら今度、陽茉ちゃんを連れてきて、おごってあげよう。


いや、食いしん坊の陽茉ちゃんのことだから、クレープなんかより、もっとお腹にたまるものの方がいいかな?


くすりと笑いながら、どんな店があるのか適当に散策する。



……そうやって、店に気をとられていたのがいけなかった。
< 169 / 201 >

この作品をシェア

pagetop