李世先輩は私のことを知り尽くしている?

上から眺めるとよく分かるけど……女子の先輩たちは、今走り出した人たちより、スタートラインへ移動する李世先輩の方にくぎ付けだ。


聞こえはしないけど、口の動きから、直接声もかけているみたい。


李世先輩は声援を軽く受け流し、足のストレッチに集中している。



ゆっくりと立ち上がったとき、李世先輩はパッと顔を上げて、校舎側を向く。


そしてあっという間に、こっそりと見守っていた私のことを見つけてしまった。




――李世先輩、がんばってください!




届かないと分かってはいても、私も他の先輩たちみたいに、李世先輩を応援したくて。


とっさに、心の中でそう念じる。



すると。



李世先輩は私を見上げたまま、パクパクと口を動かす。



……え、今——





『あ・り・が・と』




……って、言ってたよね??


まさか、本当に念が通じちゃったの?




あっ、「『見ていてくれて』ありがとう」ってことか。


なーんだ。
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