ハージェント家の天使
 新しいおもちゃを与えられた子供のように、マキウスは目を輝かせた。
 そんなマキウスをモニカは微笑ましく見守っていたのだった。

 2人はアーケードの中を歩き続けた。
 どれもマキウスの世界には無いものばかりで、マキウスは興味津々であった。
「マキウス様、あれが携帯電話やスマートフォンのお店です」
 モニカは携帯電話ショップを指差した。
 マキウスは店頭に貼られていたポスターをしげしげと眺めた。
「これは、先程、モニカが見せてくれた、あの?」
「そうです! これと同じ機械が売られているんですよ!」
 モニカは鞄からスマートフォンを取り出した。
「これで遠いところに住んでいる家族や友人と連絡を取れたり、情報を集められたり、写真を撮れたり出来るんです!」
「それは便利ですね。その、しゃしんというのは何ですか?」
「そうですね~。じゃあ、試しに撮ってみますね!」
 モニカはスマートフォンのカメラを起動させると、近くの店頭にあった看板を撮影した。
 撮影した画像をマキウスに見せると、大きく目を見開いたのだった。
「同じものが2つ……!? これは絵ですか?」
「絵というと少し違いますが……」

 モニカはマキウスと並んで、アーケードを歩いて行ったが、いつもの場所に近づく度にだんだんと心が騒ついてきたのだった。
(もうすぐだ。もうすぐ来る……)
 モニカはマキウスに悟られないように、マキウスの疑問に答え続けていった。
「モニカ、あそこは……?」
「ああ、あれはカフェですね……。あそ」
 モニカはマキウスに答えている時だった。
 正面から来た人とぶつかったのだった。
「あっ……」
「モニカ!?」
 ふらついたモニカをマキウスが支えてくれた。
「いたっ!?」
 相手の顔を見なくても、声からいつものカップルだとモニカは気づいたのだった。

「モニカ、大丈夫ですか?」
 モニカが真っ青な顔で俯いてからだろうか。マキウスが心配そうに覗き込んできたのだった。
「だ、大丈夫です……。マキウス様」
「全然大丈夫そうな顔ではありません!? どこか怪我をされましたか!?」
 慌てるマキウスの声に対して、相手の女性か連れの男性のどちらかは、怒りながら舌打ちをしてきたのだった。

「す、すみません……」
 モニカは謝るが、カップルは怒り続けていた。
「なんなの!? アイツ!?」
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