解けない愛鎖
やっぱり、あたし達は価値観が違う。
あたしがヒロキに求めたのは一生一緒にいるための安定で、ヒロキがあたしに求めたのは疲れたときに羽を休める一時のやすらぎ。
ヒロキにはずっとそばにある惰性のような愛は必要なくて、飛び回って帰ってきたときに感じられる確かな熱があればそれでいいのだ。
「俺さ、来月アメリカに行く」
「え……?」
あたしの身体に触れながら、ヒロキがさらりと言葉を流す。
ちょっとその辺に買い物にでも行くみたいな言い方に、頭のなかが一瞬混乱した。
「向こうで写真撮ってるカメラマンのアシスタントにつけることになって。しばらく勉強させてもらえることになった」
「いつまで……?」
「さぁ、わかんない」
首を傾げて緩く笑うヒロキの手をぎゅっとつかむ。
ヒロキはもうあたしのものなんかじゃないのに。この手が本当に遠くへ行ってしまうのかと思うと、潰れそうなほどに胸が痛んだ。