王女ちゃんの執事4『ほ・eye』王女さんの、ひとみ。
 虎の事情も考えず、病院の名前と場所だけ告げて。
 金と保険証を持ってきてと頼んだだけでスマホの電源を落としたので、事情がさっぱりわからなかった虎が()探しして見つけ出した保険証と自分のキャッシュカードを握りしめて、電車に飛び乗ってやってきた、と。
 中学生の虎ですら、パート仕事中のおふくろには、おれの状況を把握してからメッセする節度があるのに。
『なんか骨が折れたっぽい』などと。
 適当なことを言うだけ言って音信不通になる18歳。

「とにかく兄ちゃんは注意力散漫! 赤ちゃんの頃から落ちたり転げたりして、お母さんたちを震えあがらせてたらしいけどっ! 18歳にもなってまだ落ち着けないの?」
 はい。申し訳ありません。
 中学生に説教される高校生。
 受付カウンターの向こうの看護師さんたちが笑っている。
 うつむいていても聞こえてるからな。
「しかも小指の骨が1本折れたくらいで一海さんまで呼びつけて! まず家族に連絡しなさいっ!」
 だってマジ痛くて。
 心細かったしよぉ。
「も、いい。ちゃんと皆さんにご挨拶して。帰るよ」
「――はい」

< 17 / 66 >

この作品をシェア

pagetop