拾われたパティシエールは愛に飢えた御曹司の無自覚な溺愛にお手上げです。


……が、意外にも、桜小路さんの口利きにより、桜小路グループの傘下であるローン会社に借り換えをすることで返済額が抑えられ、随分楽になったというから驚きだ。

 そのため、病室に訪れるたびに、伯母夫婦というか、特にイケメン好きな伯母が、『桜小路さん様様よね』と言うので、洗脳でもされている心地だった。

 別にだからってわけじゃないが、ミドリガメが大事なペットだったり、やり方が少々強引だったり、口や感じが悪かったりもしたけど、悪い人ではないのかもしれない。

 最初は、純粋に亀を救ってもらったお礼のつもりだったのが、身勝手に退職したパティシエールにたまたま行き当たって、経営者側の立場から、黙っていられなかったのかもしれない。

 それでこういう結果になってしまった、ということだったのだろう。

 お陰で、『帝都ホテル』を先月退社したことも、転職のことでも、伯母夫婦に心配をかけることも、隠すこともなく、伝えることができたし。

 なにより、伯母夫婦も助かったのだから、結果オーライ。感謝しないとなーー。

 そんなわけで、上機嫌で退院の手続きを終えた私は、伯母夫婦と一緒に病院のロビーからエントランスへと向かっていた。

 実は、昨日菱沼さんから連絡があって、今日はエントランスまで車で迎えに来てくれる手筈になっているからだ。

 そしてそのまま、私の新しい職場となる桜小路さんの住む邸宅?(詳しくは聞いていないが、おそらく大きなお屋敷だろう)にて、本日より業務にあたることとなっている。

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