花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く


 浜辺で散々泣いた彼女は、一年分の涙を流したと笑って言った。

 田舎に来たもんだから、昼食を食べられるようなレストランもない。

 たまたま見つけた駄菓子屋でかき氷をもらって、それぞれ舌の色を赤色と青色にした。

 店番のおばあちゃんに「かわいいカップルさんやね」と言われて、ふたりして真っ赤になった。

 帰りの電車で、西さんは俺に頭を預けて眠っていた。

 彼女が座席に落とした花を拾って、そっとポケットの中にしまう。

 真っ赤なアマリリスは、彼女の白い肌によく映えそうだった。


< 59 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop