カラフル☆デイズ

深月先輩は少しだけ目を見開くと、「……そっ」と、小さく呟いた。


「私が小さい頃に、病気で亡くなったらしいんですけど……でもっ、お父さんとお兄ちゃんたちがいたから、寂しくはなかったし!」


だから気にしないで下さい、と言った後、先輩が再びお弁当を食べる姿を見つめる。


幸か不幸か、お母さんは私の物心が付く前に亡くなった為、お母さんとの思い出どころか記憶すら、私には一切ない。


写真ですら、いつもあさ兄やセイ兄が一緒に写っているものばかりで、お母さんと一緒に写っているものは一枚もない。


そこまで何もないと、懐かしさに寂しくなることもなければ、恋しくなることもない。


そりゃあ、ふとした瞬間に、お母さんという存在に想いを馳せることはあったけど、代わりにあさ兄たちがいつも傍にいてくれた。


だから今、先輩に言った言葉に嘘はなくて、私としてはそれよりも、たまご焼きに対する先輩の感想の方がよっぽど気になった。


たまご焼きの味付けを甘めにするか、しょっぱめにするかで迷ったけど、うちではいつも甘めのたまご焼きだし、先輩も何気に甘党だから甘く作ったんだけど。


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