昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「そうか。余計なことを聞いてすまなかった」
 口調はぶっきら棒だったが、彼が真剣に謝っているのが伝わってくる。
 いつもならそれで話を終わらせるところだが、少し彼に興味を持ってもっと話したくなった。
「森田さんは外に食べに行かないんですか?」
「ちょっとやっておきたい仕事があるから」
 森田さんの机の上には外国から届いた封書が何通かあった。
 多分取引先からの手紙だろう。
「大変ですね。でも、お腹空きませんか? よかったらおにぎり食べてください。私、お茶入れてきますね」
 彼の返事も聞かずに席を立って隣にある給湯室の冷蔵庫を開け、麦茶を入れて席に戻る。
「はい、どうぞ」
 麦茶を入れたコップを森田さんの机に置くと、彼は「ありがとう」と小声で礼を言った。
「おにぎりは梅とシャケとおかかがありますけど。あっ、おかずも食べてください」
 お弁当を森田さんの机に寄せて微笑んだら、彼は困惑気味に「ああ」と返事をする。
 ここは強く言わないと遠慮して食べてくれないかもしれない。
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