昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 全然懲りてないようだったが凛の話はせず、祖父は急に表情を変え、橋本清十郎について触れた。
「で、橋本の若造の件はどうするつもりだ?」
「偽の情報を掴ませました。あと、イギリスとアメリカの主要な取引先には橋本総合貿易と仕事をすれば、うちとの取引はなしにすると通達を出しています。青山の独占は変わりませんよ」
 今頃清十郎は悔しがっているだろう。
 そんな想像をして微かに口角を上げる俺を見て、祖父もどこか誇らしげに言った。
「わざと泳がせて偽情報を掴ませるとは……。お前がわしの孫でよかったわ」
「また彼とはやり合うことになるでしょうね」
 正直言って、青山国際通商に橋本財閥の次期総帥候補の清十郎が潜入しているとは思わなかった。
 だが、噂では行動派だと聞いているし、俺のように部下に任せておけなかったのかもしれない。それに、彼は凛に目をつけていた。
 今回、あいつの目的をうまく阻止できたが、近い将来あいつが橋本財閥の総帥になれば、うちを蹴落とそうといろいろ仕掛けてくるだろう。

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