不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ

毎日、仕事を覚えるのに必死だった。

なのに私は入社一年という慣れた頃の気の緩みで、下請け会社に支払う金額を全て、0が一つ足りないまま入力してしまうという失態をやってしまったのだ。

主任がそれに気づいて事なきを得たが、そのまま気がつかなければ、大事になっていた。

支払い期日もあるので、その日のうちに入力し直し、翌日には、主任と課長のチェックがはいる。

定時を過ぎても残業確定で、皆が、気の毒そうに帰っていく。

自業自得だから仕方ないが、落ち込み具合は立ち直れないほど酷かった。

やっと入力し直したころ、コンビニの袋に入ったおにぎりと私がよく飲んでいる紅茶のパックが置いてあり、『お疲れ様でした。よかったら、食べてください』と、名前はないが主任の字でメモが添えてあった。

社内の女子からも、気配りが自然で、嫌味もなく、目を引く容姿と人気な人。

そんな主任の優しい気遣いに涙が出て、もう2度と迷惑をかけるミスをするものかと思ったその日から、主任が気になって、気になって…目で追うようになっていた。

彼に気にいられようと可愛いく振る舞う女子の誰に対しても穏和な態度を崩さないが、一歩踏み込んで下心をちらつかせる女子がいれば、やんわりと一線を引いて踏み込ませない。

鼻の下を伸ばす男ではないのだ。
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