Dear my star
廊下に出ると、窓から見えた外は月が出ていた。
歩く生徒は1人も折らす、しんとした廊下を一人歩いた。
靴を履き替えて校門にでる。思わぬふたつの人影に目を見開いた。
「神崎先輩、いまさっき真佳が走っていって……!私、心配で」
駆け寄っけきたのは真佳の親友で、不安と怒りの目で俺を睨みつけた。
「好きって、愛してるって言ったなら、信じろって言ったなら、最後まで幸せにしなさいよ……っ!」
それはあまりにも耳に痛くて、言い返す言葉も弁明もなかった。
「ごめん、浅原さん。あいつのこと頼むね」
俺が力なくそう笑えば、やり切れない怒りを堪えるように、きつく拳を握った。
近づいてきたもうひとつの影は己を強く睨んだ。
「意気地無し」
「お前、敵なのか味方なのかどっちだよ」
ハセを睨みつけたつぎの瞬間、声を上げ泣き叫んだ。
人目もはばからず出せるだけの声で泣き叫んだ。
散々泣いたせいか涙は出ずに、喉の痛みと瞼の腫れぼったさだけが残った。
「……これで良かったんだよな」
自分にあてたのか、ハセに聞いたのか。
無いはずの答えがどうしても欲しかった。
「お前は歴としたいい兄貴だよ」
そう言われたかったはずなのに、その言葉は呪いのように首を縛った。