Dear my star


廊下に出ると、窓から見えた外は月が出ていた。

歩く生徒は1人も折らす、しんとした廊下を一人歩いた。


靴を履き替えて校門にでる。思わぬふたつの人影に目を見開いた。


「神崎先輩、いまさっき真佳が走っていって……!私、心配で」


駆け寄っけきたのは真佳の親友で、不安と怒りの目で俺を睨みつけた。


「好きって、愛してるって言ったなら、信じろって言ったなら、最後まで幸せにしなさいよ……っ!」


それはあまりにも耳に痛くて、言い返す言葉も弁明もなかった。


「ごめん、浅原さん。あいつのこと頼むね」


俺が力なくそう笑えば、やり切れない怒りを堪えるように、きつく拳を握った。

近づいてきたもうひとつの影は己を強く睨んだ。


「意気地無し」

「お前、敵なのか味方なのかどっちだよ」


ハセを睨みつけたつぎの瞬間、声を上げ泣き叫んだ。

人目もはばからず出せるだけの声で泣き叫んだ。

散々泣いたせいか涙は出ずに、喉の痛みと瞼の腫れぼったさだけが残った。


「……これで良かったんだよな」


自分にあてたのか、ハセに聞いたのか。

無いはずの答えがどうしても欲しかった。



「お前は歴としたいい兄貴だよ」


そう言われたかったはずなのに、その言葉は呪いのように首を縛った。



< 490 / 525 >

この作品をシェア

pagetop