全身全霊、きみが好きだ!
月島清花。俺の通う高校で一番の美人。胸元まである艶やかな黒髪、アーモンド型の瞳、小さいけれど筋の通った鼻、ふっくらとした唇、荒れたことなんてないであろうスベスベの肌に、豊満な胸と他より高い位置にあるくびれた腰と形の良い尻。典型的な男の欲望を体現していると言っても過言ではない彼女に恋焦がれている男は少なくないだろう。斯く言う俺もその一人だ。というか、わりと、結構、マジで、彼女に恋してる。
彼女に、樋爪将冴という、彼女とは違った意味で有名な彼氏がいるのも勿論知ってはいるけれど、悠真の言う通り、何故か今回はまだ恋心が砕け散っていない。
五人兄妹、長男、下は全員女。長男という肩書きと両親が共働きという環境のおかげで、悠真をはじめとする友人曰く、俺はとても面倒見がいいらしい。兄妹が自分以外、全員女だというのもあるのだろう。同年代の女子には妹に対するような接し方をしてしまうため女友達もわりと多く、好きな人や彼氏がどうのといった相談をされることも珍しくはない。それ自体は、別に嫌ではないのだけれど。問題はそう、相談にのっている内に相談してきたそのコを好きになってしまうという困った性癖だ。
よい、よい。みなまで言うな。分かってる。見込みなし。不毛。不憫。男友達には散々言われたし、散々憐れまれた。分かってる。見込みがないのも、不毛なのも、そんなの俺が一番分かってる。でも仕方ないだろ。気付いたら「あ、好きだ」ってなっちゃってんだから。俺だって嫌だわ、こんな性癖。