義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
「……そうなの」
 では何故、梓にそんな、ある意味余計な知識を吹き込むことを言うのだろうか。梓は今夜、渉が訪ねてきてから疑問ばかりだった。
「そういう計画がないんならいいんだ。危ないから行くなよ」
「うん……? わかった」
 夜に抜け出すなんて危ないから、そういうものに誘われても『危ないから行くなよ』。そういう注意をしにきたのかな。
 梓はそう考えた。でもそれしかないだろう。
 渉は優しいから、梓がそういう危険なことをしないように、釘を刺しに来たのかもしれなかった。
「それだけだ。邪魔して悪かったな。今夜は早く寝ろよ」
 話は終わりらしい。渉は部屋のドアに手をかけて、一歩身を引いた。部屋に帰るようだ。
「わかってるよ。もう少ししたら寝るから」
「ああ。じゃあ、おやすみ」
 それで渉は帰っていった。元通りぱたんとドアを閉めて、梓はちょっとおかしくなった。
 もう、本当に過保護だなぁ。そんな危ないことしないのに。
 心の中で言ったけれど、それは少し嬉しいことでもあった。
 自分のことを気遣ってくれたのだ。危ないことをしないように、と。それはやっぱり優しいお兄ちゃんだからだろう。
 そういうふうに、大切にしてもらえていることが嬉しい。今はまだ、『好き』の感情はいろいろミックスされた状態であるけれど、自分だけに優しくしてくれる、なんて、家族の意味でも好きなひとという意味でも嬉しいに決まっている。
 けれど、渉がどこか張り詰めたような目をしていたこと。
 それだけが梓の心にやはり不思議を残していった。
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