義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 でもこの慶隼学園。この偏差値の高い学校で低い点を取ってしまうのは恥ずかしい。中等部三年の冬に転校してきて、初めてのテストで散々な点を取ってしまった梓はそれを思い知った。
 ただ、そのときは仕方がないことでもあった。なにしろテストと学習範囲が、慶隼学園と元の烏間中学校では少々違ったのだ。梓の知らない問題も出てしまって……それはもう、どうしようもなかった。
 どうしようもなかった、けれど。
 だからといって低得点に甘んじたくはなかった。梓は最初のテストで自分の実力やら、授業の学習の差を思い知って、一念発起した。
 もっと勉強を頑張ろう。それで、クラスや学年上位にはなれなくても、少なくとも普通くらいの点数を取れるようになろう。
 それには渉の存在ももちろんあった。学園でも成績上位者としてたびたび掲示などをされているらしい渉。梓も一度、テストあとのタイミングで三年生のエリアに入る用事があって、見たことがある。
 なんと学年で五位、と書いてあった。
 仰天した。だって、三年生だけで百人以上の生徒がいるのだ。いや、百人ではきかないだろう。
 それで五位である。立派どころではない。
 梓は自分が恥ずかしくなってしまった。掲示を見たときだけではない。家でお父さんとお母さんにテストを見せたときからそうだった。
 渉もその場にいたので。テストの用紙を覗き込んで、「範囲があまりに違ったんだね。仕方がないよ」と言ってくれた。
 けれどいい印象でなかったのは当たり前だろう。渉の妹なのにこんな点しか取れないなんて。恥ずかしくて消えたかった。
 ただ、悪いばかりではなかった。渉が提案してくれたのだ。
「範囲が遅れているのはこれから取り戻したらいいさ。テスト前に見てあげようか」
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