義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 渉はいつもそうであるように、慶隼学園の緑のユニフォームを着て、軽やかにコートを駆け回り、そしてゴールにボールを叩き込んだ。慶隼学園に入ったうちの一点は、渉が取ったものなのである。
 試合は拮抗したが、なんとか慶隼学園の勝利となった。梓は心底嬉しくなってしまったものだ。
 そのあとは渉としゃべったりなどはできなかったが、家に帰ってから色々話を聞いた。
 夜、渉の部屋を訪ねて試合のことや、試合に向けて練習であったことなどをおしゃべりしたのだ。
 渉は疲れただろうにちっとも嫌な顔をせずに、梓に付き合ってしゃべってくれた。
 疲れていた、だろうけど、梓とは体力がまるで違うのだ。梓だったらこれほどハードに過ごしたら帰って即寝てしまうだろうに、そんな様子もない。
 色々な面で、とても活動的で活発で、パワーに溢れている渉なのである。
 そんな、家に帰ってのおしゃべり。梓はとても楽しい時間を過ごした。
 もうすっかり夏なので、ねぎらいも兼ねて冷たい飲み物を持っていった。お母さんと作ったレモネードである。
「レモンはクエン酸が入ってて、疲労回復にいいんだって!」
 梓が誇らしそうに言ったことに渉は微笑んで、「確かに栄養ドリンクとかでもあるよな」とグラスを取り上げてくれた。ひとくち飲んで、「ん、うまい」と言ってくれる。
 レモンをしぼってはちみつを入れて、そこへ炭酸水を注いだだけ。でもおいしいと言ってくれるのだ。
 渉とそんな何気ない時間を過ごせるのが嬉しかった。今までは一人っ子であったので、家では一人だった。お母さんも今よりたくさん仕事をしていて、家にいないことも多かったし。
 けれど今は違う。お母さんは仕事を変えてパートになって、週に何日か出掛けるだけになったし、お父さんもたまに遅くなることがあっても、梓が起きているうちに必ず帰ってくる。
 それに渉だって、部活か生徒会か、どちらかで放課後活動していても、やはりそう遅くはならない。一緒に夕ご飯が食べられる。ゆえに、同じ家で過ごす時間はとても長かった。
 梓は幸せだった。優しい家族に、みんなで過ごせる穏やかで明るい時間。
 新しい生活にはじめはだいぶ不安だったけれど、と思う。今となっては、こんな幸せな生活になれたのだから、心配することなんてなかったんだよ、と過去の自分に言ってあげたいくらいだ。
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